かつてのWebマーケティングはペイドメディア(Web広告)による自社商品・サービスの認知拡大から集客を行うシンプルなものでした。その後インターネット環境やITテクノロジーの進化、ユーザーの購買行動の複雑化などを背景に、Webマーケティングにも様々な手法が確立されてきました。本コラムのメインテーマである「オウンドメディアの運用」もその手法の一つです。
様々な形態のオウンドメディアがある中で、企業が比較的立ち上げやすいのが自社のブログでしょう。実際、コンテンツマーケティングに興味を持った企業の方が「まずは自社ブログを」と軽い気持ちで始めるケースも少なくないようです。しかし始めやすいことと、成果を出しやすいこととは別の話です。そもそも企業ブログ運用の目的はマーケティングに限ったものではなく、目的に応じた運用の仕方があります。
今回はオウンドメディア運営における目的の重要性を今一度確認すると共に、その目的別にブログメディア運用の大切なポイントを解説いたします。
目次
目的なきメディア運営に成功はない
オウンドメディアに限らず、皆様が会社で何らかのプロジェクトを始める際にはまず目的・目標を設定されるでしょう。具体的な目的があってこそプロジェクトの方向性が明確になり、また目標の達成度に応じた軌道修正も可能となります。
冒頭で触れたような企業ブログの運用も同様のはずですが、当社が関わってきた企業様の中には、この目的の重要性があまり周知されていないケースがしばしば見られます。
「ブログを開設して定期的に記事を投稿する」それだけのことなら簡単に思えるかもしれませんが、何をテーマに、どの程度の量や頻度で書けば良いかは、ブログの目的と運用方針によって異なります。ただコンテンツを維持するためだけに漠然と何かを書き続けるだけなら、貴重なリソースを費やして取り組む必要はありませんし、何より担当者のモチベーションが続きません。
オウンドメディア運用で成果を出すためには、まず目的を明確にし、続いて目的達成に向けての戦略面を設定しましょう。具体的には以下のようなことです。
- どんなターゲット(ペルソナ)に対して
- どんなユーザー行動を経て
- 最終的にどうなってもらいたいか
この目的と戦略がブレなければ、何を書けば良いかに迷うことはなく、中長期にわたる継続的な運用が可能となります。メディア運営に携わる方々は常にこの目的と戦略を念頭に置いておきましょう。
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目的別・メディア運営のポイント
企業がオウンドメディアを運営する目的は、大きく言えば「自社の事業展開における課題解決のため」です。もちろん業種や経営状況などによって課題や問題の内容は異なりますが、私たちが過去見てきた多数のメディア運営事例を総合すると、ほぼ次の4つに分類されます。
- マーケティング
- ブランディング
- リクルーティング
- 社員教育
これらの目的別に、オウンドメディア運用の成功のために知っておくべきポイントを以下に詳しくご説明していきます。
マーケティング「顕在層から狙う」
一口にマーケティングといっても様々な定義があり、顧客ニーズを知るための市場調査から商品開発、宣伝・プロモーションまで幅広い意味が含まれます。ここでは「メディアを通じて自社の商品・サービスをユーザーに訴求し、販売を促進する」という目的のために企業ブログなどのオウンドメディアを運用する場合を考えます。
ユーザーに商品を購入してもらうためにはまず、商品やサービスの情報を認知してもらわねばなりません。しかし商材を認知した全てのユーザーが関心を持つわけではなく、興味関心から購入に至るユーザーはさらに少なくなります。オウンドメディアの運用は、こうした様々なユーザーの状態に合わせて適切な情報発信を行う必要があるのです。
一般にマーケティングのターゲットとなるユーザーは、「潜在層」「準顕在層」「顕在層」の3つに分けることができます。
潜在層とは、まだ悩みや願望を持っておらず商品やサービスに関心のないユーザー層です。準顕在層とは、解決したい悩みや願望はあるものの商品・サービスを認知していないユーザー層、顕在層とは、悩みや願望がありそれを解決できる商品・サービスを認知している層です。母数としてはもちろん潜在層が最も多く、準顕在層、顕在層の順に母数が小さくなるファネルを形成しています。
それでは、オウンドメディアでのマーケティングにおいて狙うべきターゲットはどこでしょうか?
「より広く商品等を認知してもらうために、まずは潜在層へのアプローチを」と考える方が多いかと思いますが、売上拡大を積極的に目指すのならば、商材に最も近い「顕在層」、つまりファネルの先端部から狙うべきです。
購買行動に直結する検索キーワードを絞り込み、これを題材にした記事を発信していくことで、コンテンツとしてはより専門的かつニッチな内容になりますがターゲットユーザーの解像度は高まり、数は少なくともより購入に近い顧客層への訴求とCV獲得・売上増を期待できます。
その上で、マーケティングの状況を見ながら徐々にターゲット層を準顕在層・潜在層へと広げていけば良いのです。
逆に、検索ボリュームは大きいものの商材から離れたテーマやキーワードで潜在層への訴求を目指すのは、すぐ結果が出れば良いですが、多くの場合、売上に反映されるまでには時間がかかります。そのためにオウンドメディアの運営を存続できなければ元も子もありません。
ブランディング「コンテンツのクオリティが命」
ブランディングとは、製品やサービス、企業の持つイメージや価値を、ユーザーに広く認識させる手法の総称です。ブランディングを行うことで競合との差別化を行えるだけでなく、プロモーションへの依存度を減らし、ロイヤリティ(企業や商品に対する愛着・忠誠)向上による持続的な成長や安定的な売上確保にもつながります。
良いブランドイメージは企業の大きな財産となりますが、それは一朝一夕に手に入るものではありません。ブランドコンセプトを設定し、ターゲットユーザーに対して自らのアイデンティティを戦略的かつ継続的に発信していく必要があります。その手段として、オウンドメディアを運用するというのが二つ目の目的です。
オウンドメディアは、他のペイドメディアやアーンドメディアとは違い、情報発信の内容や頻度を自社で完全にコントロールできるという点でブランディングに活用しやすいといえます。
オウンドメディア運用からブランドイメージを醸成・定着させるには、たくさんの事柄を伝えるよりも、ブランドのアイデンティティを様々な切り口で丁寧にコンテンツ化し、ブレずに繰り返し発信することが大切です。
そして企業ブログなど多くのオウンドメディアでは基本的にどの記事も同じフォーマットになるため、コンテンツの「中身」をいかに充実させるかが勝負になります。
テキストや写真・イラストなどでブランドの価値を余さず伝え、読み手の満足度が高いコンテンツを提供し続けることができれば、運営企業への信頼が生まれ、ユーザーと企業が中長期的なコミュニケーションを築く中でブランドの何たるかを深く浸透させられるでしょう。
時には企業側のメッセージだけでなく、タレントやインフルエンサーなど影響力の強い第三者の言葉をもってブランドイメージを語ってもらう方法も有効です。その際はタレントの人選も重要になります。
いずれにせよ長い取り組みになりますので、メディア運用の前段階で継続可能性(予算や題材、タレントのアサインなど)についてもよく検討しておきましょう。
リクルーティング「ターゲティングとポジショニング」
自社にとって有望な戦力となる求職者に情報発信を行い、より多くの人材に自社を選んでもらうためのリクルーティング(採用活動)にオウンドメディアを活用する企業も数多くあります。自社運営のメディアであるため、一般的な求人サイトと違い掲載できる情報量(文字数や画像の枚数など)に制限がなく、また業種や規模の近い競合他社と比較されにくいのもメリットです。
リクルーティング目的でのオウンドメディア運営は、業務内容をはじめ職場環境や福利厚生、社風など様々な角度から、勤務先として自社がいかに魅力的であるかを伝えることが重要になります。つまりは「会社の良いイメージを求職者に定着させる」ための運用であり、上述の「ブランディング」に近いかもしれません。
そして最も重要なのは、運営にあたり「採用したいターゲット」と「自社のポジショニング」を明確にすることです。
まず前者に関しては、どの企業にもそれぞれ欲しい人材の理想像があるはず。「職務に必要なスキルを備えている」「自社の経営方針や価値観に共感できる」「何事にも積極的に取り組める」など、様々な人物像が考えられます。こうした自社が欲している人材にターゲットを絞り込み、その人に興味関心を持ってもらえるようなコンテンツを制作するよう心がけましょう。
ターゲット像を明確にするためには、すでに自社で活躍している人材をサンプルとして共通した要素を見つけ出すという方法もあります。
もう一つの「自社のポジショニング」とは、競合他社とどの点で差別化をはかるかです。理想的な人材がメディアに接触してくれたとしても、最終的に自社を就職先に選んでもらえなければ意味がありません。そのためには、まずメディア運営に携わる人たちが、他社にない自社の魅力、訴求点がどこにあるかを把握し、それをコンテンツで可視化する必要があります。簡単なことではありませんが、採用活動では非常に重要なポイントですのでぜひ取り組んでください。
さらに付け加えると、オウンドメディアの運営が軌道に乗るまでにはある程度の時間がかかることを理解しておきましょう。多くの学生が就職活動を意識してWeb上での情報収集を始める頃にメディアが形になっているよう、先々までコンテンツの運用計画を立てておいてください。
社員教育「情報管理は万全に」
オウンドメディアと聞くと「顧客やユーザーへの情報発信」のためのツールと考える方が多いと思いますが、自社の社員・スタッフに向けてのツールとしても活用できます。
具体的には、業務に関する様々なノウハウやナレッジを言語化してコンテンツという形でオウンドメディアに蓄積していくものです。
これにより複数の社員が個々に備えているスキルを共有して業務の属人化を防げるとともに、知識経験の浅い社員でもオウンドメディアを通じて学習できるためスキルの平準化にもつながります。
また自社の豊富なナレッジを蓄積・網羅したオウンドメディアを一般公開することで「この会社は業界の幅広い知見を持っている」と社外に自社の専門性をアピールするというブランディグにもつながり、採用への好影響も見込めます。
こうした社員向けのオウンドメディア運用の際に注意したいのは、メディアに掲載する情報内容の管理です。情報内容の専門性や希少性が高いほど社員やユーザーにとって有益なのは確かですが、公開して良いものとNGのものの「線引き」が非常に重要になります。これを見誤って、競合他社に知れてはならない社外秘の情報まで流出させてしまえば企業にとって大きな損失となります。秘匿性の高いナレッジは社内wikiや文書で情報集積・共有を行うのが良いでしょう。
また、社員教育やナレッジ共有を目的としてメディア運営を行う場合、売上や会員数のような明確なKPIの設定や効果測定が難しく、継続運用のモチベーションを保ちづらい傾向があります。プロジェクトの意義を関係者一同でよく確認し合うと共に、コンテンツ更新のスケジュール設定も綿密に行ってください。
運営を継続できる体制の確立を
オウンドメディア運営のポイントを、メディアの目的別にご説明してきました。皆様の経営戦略や社内事情に応じてご参照の上、より多くの成果を獲得していただきたいと思います。
最後に、どの目的においても共通した、オウンドメディア運営の最重要ポイントについて触れておきます。それは、このコラムでもたびたびご説明していますが「運営体制」の構築です。
オウンドメディア運用で目に見える成果を出すまでには、とにかく時間がかかります。どれほど内容が良く読みやすいコンテンツであっても、公開して即座にオウンドメディアに人が集まってくるものではありません。検索エンジンに評価されるまでのコンテンツ制作や運用・分析を継続できるだけの組織の体力が不可欠です。そのための運営体制を、メディアを立ち上げる前段階から確立しておくことが、オウンドメディアを成功に導く最大のポイントといえるでしょう。
オウンドメディアの理想的な運営体制
オウンドメディアの継続、しかもただ諾々と続けていれば良いのではなく、目的達成につながる一定水準以上のコンテンツを発信し続けるためには、運営に関わる様々な業務をスタッフで分担して進める必要があります。社内の人的リソースにもよりますが、具体的には次にあげるような体制が構築できれば理想的です。
- プロジェクトリーダー(編集長)
:目標設定や予算管理、分析などメディア全体の進行を担うプロデューサー的業務を行います。 - コンテンツディレクター
:コンテンツごとの進行管理を行います。 - ライター
:設定されたテーマやキーワードに沿ってコンテンツ記事の執筆を行います。 - クリエイター
:画像や動画を作成します。(デザイナー、イラストレーターなど) - コーダー
:コンテンツの掲載作業や画面の改修を行います。
「編集長」が成功のカギを握る
上にあげた各役割の中でも、特に重要なのがプロジェクトリーダーにあたる「編集長」です。編集長はオウンドメディアの運用状況全体を俯瞰しながら、順調な部分は伸ばし、ほころびがあれば是正し、発信するべきコンテンツ内容を戦略的に考えながら目的達成に向けてかじ取りを行うべき立場にあります。
例えば、マーケティングが目的であるオウンドメディアの場合は、ターゲットユーザーのニーズや購買行動を理解した上でより多くのリードを獲得できるような内容・キーワードでのコンテンツ展開ができるよう全体をコントロールしていく必要があります。
ブランディング目的であれば、記事内容だけでなくサイトデザインや挿入画像・動画などを含めたメディア全体の佇まいがブランド力向上に寄与しているかのクオリティチェックを行うのが編集長の役割です。また人材採用にオウンドメディアを活用する際は、編集長自身が自社の魅力や採用したい人物像を理解していなければなりません。
また企業ブログのようなメディアの運用では、一般社員が持ち回りで記事を書くこともあります。社員にとっては平時の業務に加えてタスクが増えるため、つい後回しにしがちですが、そこを計画通り進行できるよう推進するのも編集長の力量次第です。
編集長はメディア運営の頭脳にあたるポジションであり、まぎれもなくオウンドメディアの成否を握るキーパーソンです。編集長の采配やマネジメントが良ければコンテンツ更新やメディア運営は安定し、中長期的に大きな成果を期待できます。逆に編集長に十分な権限や裁量が与えられず、上長の指示や組織のしがらみに縛られるようだとそのオウンドメディアは長く続かないでしょう。当社がこれまで関わってきた、多くの企業様の実例を見ても明らかです。
目的達成を後押しするオウンドメディア運営ならスプーにお任せください
私たちスプーは、これまで20年以上にわたり企業向けのオウンドメディア構築・運営を手掛けてきました。
クライアントの経営戦略に沿った目標設定からコンテンツ制作、持続可能な運営体制の構築まで、オウンドメディア運営に関するあらゆる業務に対応が可能。様々なメディアで活躍するエディター・ライター陣を自社に擁しており、特にメディア運用の肝となる「運用目的にかなった高品質のコンテンツ制作」においては自信を持っております。豊富な実績と編集力で、皆様のご期待以上のクオリティをご提供いたします。
成果の出るオウンドメディア運営に、必ずやお役に立てると存じます。ご関心のある方はぜひお気軽にお声がけくださいませ。