独自に制作したコンテンツでユーザーへの情報発信を行う「オウンドメディア」を、マーケティングに活用している企業が増えています。マーケティングのトレンドは時代に応じて変遷するものですが、オウンドメディア運用を通じての見込み客獲得やファン層拡大は、現在のWebマーケティングにおいて利用度の高い手法であるのは間違いありません。
今回は、オウンドメディアでのマーケティングが今日注目されている背景やメリット、成功のポイントなどについて詳しく取り上げます。
目次
オウンドメディアマーケティングとは
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運営するメディアの総称です。通常はWeb上に制作されたメディアコンテンツのことを指すことが多いですが、広い意味では紙・Web・メールなど媒体を問わず「企業が所有するメディア」は全てオウンドメディアといえます。
マーケティングの世界では、企業が情報発信を行う様々なメディアを3つに分類して「トリプルメディア」と呼び、オウンドメディアもこの中の一つです。トリプルメディアについての詳細は割愛しますが、簡単にご説明すると次のようになります。
- オウンドメディア:企業が自社で所有・運営するメディア(企業ブログなど)
- ペイドメディア:企業が料金を支払って利用するメディア(Web広告など)
- アーンドメディア:ユーザーが発信する情報で構成されるメディア(SNS、口コミサイトなど)
トリプルメディアについて詳しく知りたい方は、当ブログの過去記事をご覧ください。
本稿のテーマである「オウンドメディアマーケティング」とは、企業がWebサイトやブログなどのオウンドメディアを用いて消費者に有益な情報を提供し、集客やコミュニケーションを行うマーケティング手法です。日本では2015年頃から普及し始めたといわれています。
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オウンドメディアマーケティングが注目される理由
冒頭でも触れた通り、近年オウンドメディアを自社のマーケティング戦略に取り入れる企業が非常に増えています。その背景にある主な要因についてご説明します。
従来のWeb広告への不信感
これまでのマーケティングは、企業(広告主)が不特定多数のユーザーに広告を配信して商品・サービスを宣伝するという手法が最もポピュラーで、テレビ・新聞などのマスメディアはもちろん、インターネット媒体においても、ユーザーの意思に関係なく企業側から一方的に発信する「プッシュ型」の広告が、長く広告集客の主流とされてきました。
そして近年、Webサイトやブログ、SNS、動画などあらゆるWebコンテンツで広告が表示される「飽和状態」なのはご存じの通りです。その膨大な広告量に多くの消費者は辟易しており、広告そのものに拒否反応を示すユーザーも少なくありません。実際、Web広告を強制的に排除する「広告ブロッカー」や、課金制Webサービスに見られる「広告なしプラン」などを利用して物理的に広告を避けるユーザーも増えています。
こうしたWeb広告全体に対する消費者の不信感が、広告に頼らないオウンドメディアマーケティングに企業の注目が集まる一因と言えるでしょう。
ユーザーの購買行動の複雑化
メディアの多様化やPC・スマートフォンの普及に伴い、消費者の購買行動は年々複雑化してきています。それに応じて、Webマーケティングの手法もブログやSNS、広告、アフィリエイト、メールマガジンなど多様化しており、前章にあげた不信感云々とは別の意味で、広告一辺倒の戦略で大きな成果をあげるのはなかなか難しい状況といえます。
例えば、SNS時代特有の購買行動プロセスとして提唱されている「ULSSAS」では、最初のタッチポイントが広告ではなくUGC(ユーザー生成コンテンツ)となっています。このように消費者が広告を介さず様々な媒体・コンテンツから商品情報を入手し、購入に至るケースは珍しくありません。
- U:UGC(ユーザー生成コンテンツ)
- L:Like(いいね)
- S:Search1(SNSでの検索)
- S:Search2(検索エンジンでの検索)
- A:Action(購買)
- S:Spread(拡散)
ここで注目したいのは、上述の「Action(購買)」の直前に「Search(検索)」がある点です。これは代表的な消費者行動モデルの一つ「AISAS」でも同様で、商品の認知やアテンションは様々であっても、最終的に商品購入を決定する上で、検索エンジンやSNSでの検索というプロセスが非常に重要であることが分かります。
オウンドメディアはその構造上、基本的にSEOに強く、漠然と関心のある情報を探している潜在ユーザーにアプローチしやすいというメリットがあります。これも多くの企業がオウンドメディアマーケティング導入に前向きな理由の一つです。
広告費の高騰
予算に応じた広告出稿が可能というのはWeb広告の利点の一つですが、より高いマーケティング効果を得るためには、相応の広告費の投入が必要です。このWeb広告費について興味深いデータがあります。
HubSpot Japan社が日本のマーケティング組織の従業員を対象に行った意識調査によると、マーケティング組織が抱える課題として「広告費の高騰」に課題を感じている回答者が実に62.3%にのぼっているのです。
参考:https://www.hubspot.jp/company-news/marketing-challenges2023
今やWeb広告は日本の総広告費全体の40%以上を占めており、市場の成長とともに広告主間の競争は激化の一途にあります。これに伴い広告表示や顧客のリード獲得に要するコストが増え、こうした調査結果に表れていると思われます。
さらに上述の調査では、広告費の高騰に伴い「広告以外のチャネルでのリード創出に迫られている」と回答した人が、半数以上の57.0%でした。多くのマーケティング従事者は広告媒体に代わる宣伝・集客方法を模索しており、オウンドメディアもその有力な選択肢の一つとなっています。
オウンドメディアマーケティングのメリット
広告配信やオウンドメディア運用の他にもWebマーケティングには様々な手法があり、それぞれの長所・短所を理解した上で使い分ける必要があります。ここではオウンドメディアをマーケティングに用いることで得られる主なメリットを簡単にご説明します。
広告費の削減
オウンドメディアマーケティングは、広告による集客を行わず、消費者に訴求力のあるコンテンツをWeb上に提供し続けることでメディアへの自然な流入を目指します。運用にかかる広告費は必要ありません。
上述の通りWeb広告の費用相場は高額化の傾向にあり、特に広告費がマーケティング施策の予算を圧迫しているという企業様にとってはより有効といえるでしょう。
もちろんオウンドメディアの構築・運用にも人件費や諸費用がかかりますが、Web広告よりは運用コストを抑えられるケースが多く、また運用を長く続けるほどコンテンツやドメインが成長しメディアの訴求力が高まるため、費用対効果は向上していきます。
ナーチャリングによる顧客拡大
オウンドメディアマーケティングでは、同じユーザーに、企業が提供する多数のコンテンツを繰り返し閲覧してもらいやすいのが特徴です。
自社メディアならではの、商品・サービスの魅力や強みを訴求する良質なコンテンツはユーザーの信頼を生み、潜在層から見込み客の獲得、さらには見込み客から顧客やリピーターへのナーチャリング(顧客育成)につながります。
Web上での情報収集が容易に行える今日、企業や消費者は以前よりも時間をかけて商品等の購入先を比較検討するようになっており、その点からも中長期的に顧客との関係構築を目指すオウンドメディアマーケティングの親和性は高いといえます。
コンテンツの資産化
オウンドメディアは、1つのWebサイトやブログに継続して記事コンテンツを蓄積していく「ストック型」のメディアです。一過性の情報発信にとどまりがちな広告やSNSと違い、運用を継続するほどに中身が濃く説得力の高いコンテンツメディアとなり、ユーザーを自社のビジネスに誘導しやすくなります。コンテンツ内容を自社で自由にコントロールできるのもメリットです。
またコンテンツのボリュームが増えるほどSEO効果も高まりアクセスアップが期待できますが、こうしたSEOに強いWebサイトは一朝一夕に構築できるものではありません。オンラインでの中長期的な集客経路として重要な媒体です。
さらには別コンテンツへの展開(SNSの投稿、動画の題材など)やナレッジの社内共有などにも活用でき、オウンドメディアはユーザーのみならず企業にとっても貴重な情報資産となるでしょう。
オウンドメディアマーケティングの失敗例
オウンドメディアによるマーケティングが優れた手法なのは確かですが、だからといってオウンドメディアを立ち上げさえすれば必ず成果が出るというものではなく、「サイトアクセスが増えない」「思ったような成果が出ない」といった失敗事例も数多くあります。
当社がこれまで多数のメディア運営に関わってきた経験をもとに、オウンドメディアマーケティングが失敗に終わる原因として特に多いものをご紹介します。
更新が途絶える
メディア構築までは順調に進むも、その後、記事の追加・更新が続かなくなり、全く更新のないまま放置されてしまうケースです。更新頻度の少ないコンテンツはSEO的に不利ですし、何か月も前の記事が最新の状態だったりするのはユーザーの心象も良くありません。
こうした問題が起こる原因には主に次の2つがあります。
立ち上げ時の検討が甘い
オウンドメディアは構築以上に運用・更新が重要で、そのためには多くの人的リソースや社内組織の理解が必要です。これらの準備は、メディア立ち上げ時から検討しておかねばなりません。
記事化できる題材が足りない
そもそも売りたい商品やサービスに、継続的に記事化できるようなテーマや題材が足りない、いわゆる「ネタ切れ」のケースもあります。「何を書けば良いのか分からない」という生みの苦しみが続けば、やがて更新は途絶えてしまいます。担当者は事前にある程度の更新スケジュールや題材の用意をしておきましょう。
内容に一貫性がなくなる
オウンドメディアはコンテンツ更新の継続が大切ですが、それを重視するあまり、記事の質よりも「書きやすい」「作りやすい」記事を量産し、コンテンツの内容に一貫性がなくなってしまうことがよくあります。特に記事作成を行う担当者が複数いる場合に起こりやすい問題です。
散漫で一貫性のないコンテンツメディアは、せっかく流入してきたユーザーに迷いや不信感を与え、CV獲得から遠ざけてしまいます。
オウンドメディアを立ち上げる段階で、顧客に伝えるべき、自社サービスに関連したテーマを明確にした上で、関係者間で共通認識を持っておくようにしましょう。
成果を急ぐ、明確な成果を求める
広告費がかからずリード獲得のコストパフォーマンスが良いというのはオウンドメディアマーケティングの利点の一つですが、同時に、広告のような「即効性」がないのも、見逃してはならないオウンドメディアの特徴です。
着実にコンテンツを提供し続け、SEOで評価され、情報を探している見込み客の流入があって、ようやくオウンドメディアは力を発揮します。
オウンドメディアに携わる関係者や決裁者がこうした性質を理解せず、早々のアクセスアップや売上に直結するという誤った期待を持たれてしまうと大きな支障になります。最悪の場合はオウンドメディアの継続も危ぶまれるでしょう。
「オウンドメディアマーケティングは、長い目で成果を追う中長期的な運用が大前提」という点について関係者の理解を得ておくのは、実は非常に大事なことです。
スプーのオウンドメディアマーケティング成功事例
最後に、当社スプーでのオウンドメディアマーケティング成功事例を1つご紹介させていただきます。
Webリニューアルでコンテンツを強化。BtoBマーケティングを推進
クライアント様はICTサービスをベースに幅広い事業を展開されています。当社にてWebサイトのフルリニューアルを承り、その施策の一つとしてオウンドメディア制作を行いました。
オウンドメディアでは、様々なITプロダクトを手掛けるクライアント様の豊富な知見を生かして、先進的なITトレンドや業界最先端の技術などを記事コンテンツとし、集客アプローチを行っています。
サイトリニューアル後は訪問ユーザー数が50%以上増加。AIやIoT関連のキーワードでGoogle検索1位表示を獲得した記事もあります。さらに集客したユーザーの様々なお困り事にこたえられるよう、サイト内の情報を徹底的に整理してサイト内回遊を改善。メディア流入からの売上につなげています。
私たちスプーではこのようなオウンドメディアマーケティング構築・運用を得意としており、多数の成功実績をあげております。これからオウンドメディアマーケティングを始めたいという企業様はぜひお気軽にご相談くださいませ。